校長コラム
2024年2月9日
「積極的に行動できる子」に本当に必要なものは
同世代のお子さんが、新しいことにどんどんチャレンジしていく姿をよそに、ご自身のお子さんがなかなか踏み出せない姿を見て、「この先大丈夫かしら」と不安になってしまったことはないですか?
今回のコラムは、特に小学校入学前に「積極性を身につける方法」について、年間1.2万人が受講する、1歳から高校生までのキッズダンス専門
Ti-ccha(ちっちゃ) KID’S DANCE SCHOOL 校長であり、チャイルドコーチングアドバイザーTi-cchaより、ご紹介させていただきます。
▼目次▼
- 「積極的ではない子」とは?
- 積極的ではないの勘違い
- 「消極的な子」にしてしまうNG行動
- 「積極的」を育むコツとは?
- 「観察している時間」を否定しない
- 積極性が出てきた子の成長
- まとめー子どもの可能性は無限大ー
「積極的ではない子」とは?
「積極的でない子」とは、どんなイメージですか?
さまざまな場面で、率先して行動できない。
先生に質問された時に、すぐに返答できない。
物事に興味・関心がないように見える。
このようなイメージをお持ちではないでしょうか?
キッズダンススクールの校長として、いろいろな親御さんとお話しさせていただきますが、「うちの子、積極的じゃなくて」というお悩みをお持ちの保護者の方は、多くいらっしゃいます。
当校に興味をお持ちいただき、いざ体験レッスンが始まっても、親御さんのご心配通り、お子さんがレッスンに参加しないケースもあります。
そこで、私が必ずお伝えする言葉があります。
「賢いお子さんですね!」
積極的ではないの勘違い
前項で述べた体験レッスンの場面において、すぐにレッスンに参加していくお子さんを「積極的」と想像されているかもしれませんが、実は、小さなお子さんの場合、一概にそうとは言えません。
その理由は、お子さんをよく観察すると見えてきます。
積極的に見えないお子さんの特徴として多いのは、
①観察 → ②自分が参加している様子を想像 → ③できるかできないかの判断
この流れを自分の頭の中で行い、その上で
「自分にはまだできない」と感じたから、観察を継続しているということです。
とっても賢いと思いませんか?!
では、「積極的に見えるお子さんは賢くないのか?」という声が聞こえてきそうですね(汗)。
小さいころから積極的に見えるお子さんの特徴として、新しいことを始める経験が豊富な場合もあります。
「やってみたらできた」
その経験が多いので、「最初はできないかもしれないけど、やってみよう」と行動に移すことができると考えられます。
他には、とにかく好奇心が旺盛なお子さんも、すぐに参加できます。
どちらかというと、動きが活発で、考えるよりも先に行動するタイプのお子さんですね。
話を観察タイプのお子さんに戻しましょう。
私は、消極的とは「自分から進んで取り組まない様子」だと思います。
観察タイプのお子さんは、一見「参加していない」ように見えますが、実は、その空間にいるだけで、すでにダンスレッスンに参加しているのです。
ですから、私は親御さんに
「この、観察している時間を大切にしてあげてください」と言います。
「せっかく来たのだから踊ってみようよ!」と大人は思いますよね。
でも、お子さんにとっては、この観察時間がとても大切なので、自分がしたいことをよそに、ダンスを強制されてしまうと、心の準備ができません。
「無理にさせてしまうと、ダンスが楽しいと感じるより前に、この場を【自分がいやなことを強制される場所】だと認識してしまいます」
と伝えます。
すると、親御さんは目を丸くされることが多いです。
では、どうしたらいいかというと、観察からスタートされるお子さんには、ダンスを皆で楽しむ姿をたくさん見せるのです。
お友だちも楽しそうで、先生も優しそう! そんな様子を見てもらいます。
親御さんもそれを見守りながら、「楽しそうだね」と、お子さんの観察の中に生まれる感情に寄り添ってあげるのです。
もしここで、観察の時間を優先させつつも、保護者の方が、例えば横でスマホを見ていたり、お子さんと違う感情で過ごしていると、一気にお子さんは不安になります。
(ここでは小学校入学前の年齢のお子さんについてお話ししています)
観察しながら心の準備をする時間に、お子さんの心がひとりぼっちになるからです。
そうしていくうちに「自分にできるかな?」という心配より、「楽しそう! やってみたい!」そんな好奇心が勝つ瞬間があります。
その瞬間を見逃さず、応援してあげると、一歩踏み出す勇気に繋がります。
「消極的な子」にしてしまうNG行動
「やってみたら?」
「大丈夫! あなたならできるよ!」
このような言葉は、お子さんが追い込まれてしまうので使わないようにします。
なぜなら、観察タイプのお子さんは「自分にはまだ出来ない」と考えて観察を続けているからです。
「あなたならできるよ!」という言葉は、自分の考えに対して、正反対の考え方です。
場合によっては、お子さんを混乱させてしまうかもしれません。
お子さんが前に踏み出せるようにするには、まずは、観察している準備時間に「どれだけ心が安定できるか」それがカギになります。
心を和らげてあげるのは、
「やりたかったらやっていいよ。」
「自分だけできなかったらいやだよね。でもね、みんな最初からできないから大丈夫だよ。」
時には背中をなでてあげるなどスキンシップも、安心感を与えることにつながります。
無理に引っ張り出して「やってみないとわからないでしょ!」と、強制してしまうのは絶対によくありません。
「積極的」を育むコツとは?
「まじめできっちりしているタイプのお子さん」
ひとつひとつじっくり取り組むタイプのお子さんは、失敗がきらいなことが多いです。
ですから、自分から見てあきらかに「できない」と想像すると、参加しない場合があります。
そんな時は、チャレンジの度合いを小さくする提案をします。
例えば大人でも「今から3キロマラソンをしましょう」
と言われると、全然平気な人もいますが、「無理!」と思う人もいますよね。
「では1キロは?」
「1キロか〜いけるかな…」(不安)
「では10メートル!」
「それなら全然大丈夫!」(自信ある)
こんなふうに、大丈夫と思える程度までハードルを下げてあげるのです。
さまざまな場面で、このような提案をしてあげて、お子さん自身が「これならできる」と感じる瞬間に導くのです。
取り組む物事により、ハードルの下げ方はいろいろだと思います。
ダンスレッスンの例であれば、
①今日は見ているだけ
②カンタンそうな振り付けのシーンだけ誘ってみる
など、体験レッスンの全ての時間に参加させるよりも、ハードルが下がるように設定してみます。
「園ではしっかりできるけれど、園と家でギャップのあるタイプのお子さん」
お子さんだけで参加させる方が、積極的に参加できるケースもあります。
親御さんとしては、初めての瞬間に立ち会いたい気持ちもあると思うのですが、園に通っているお子さんで、年少さん以上のお子さんでは、親御さんが見学をされないことで、すんなりと参加できたケースもあります。
その理由は、親御さんのことが大好きだからです。
・できない自分を見せてがっかりさせたくない。
・親御さんの姿が見えないことで、園で過ごすように心の切り替えができる。
・そばにいると甘えたくなる。
などなど、お子さんの性格や年齢によりさまざまですが、園に通っているお子さんであれば「先生」という存在の意味を理解していますので、集団に入ることが比較的スムーズな子も少なくありません。
その反面、園でがんばっているからこそ、そばに親御さんがいるとたくさん甘えたい気持ちになるお子さんもいるので、お子さんだけの参加の方がスムーズな場合もあります。
「観察している時間」を否定しない
できた時に、すぐにほめること、これが大事です。
するとお子さんはとってもうれしいですよね。
この、うれしい経験をたくさん増やしていくのです。
消極的になる原因を起こす感情とは、「できるかな?」「失敗したらどうしよう」というものです。
そんな感情とともに観察して、自分が参加する姿を思い描き、「できたら楽しそう」とイメージをふくらませていきます。
そんな中でハードルを下げて、参加できた時、
「できた」→ほめられた!
この経験につなげていきます。
肝心なのは、
(一見消極的に見えるけれども)
「前向きに観察している」時間を否定しないこと。
中には、少しできたくらいでほめてしまっては、この子のためにならないというお考えの方もいらっしゃると思います。
チャイルドコーチングの観点からは
「どんな小さなことでも、できたらほめる!」というのがオススメです。
特に、観察から入ったタイプのお子さんは、自分にできるかどうか、大きな不安から抜け出して行動できたのですから、その瞬間、とても成長しているのです。
「周りの子は当たり前にできていることなんだから、それができてもほめない」のではなく、その子自身の成長に寄り添ってあげると、お子さんの心が安定していきます。
ほめられた経験が増えるたびに、「初めてのことも、やってみたらできるかもしれない」と、次のチャレンジの際の積極的な行動につながります。
積極性が出てきた子の成長
積極性を育むために一番大事なのは、「心が安定していること」です。
ほめてもらってうれしい感情を多く経験し、自己肯定感が高いことがすごく大切です。
先に紹介した「観察から入るタイプ」のお子さんで、その後、見違えるほど積極的になった例をご紹介しますね。
2歳で出会った女の子
入園前のお子さんで、集団生活の準備も兼ねて、当校のお母さんと一緒に受講するクラスに通われることになりました。
お母さんのお膝の上が一番居心地のいい場所。
何かワークをする時は、必ずお母さんと一緒がいいお子さんです。
まずは、担当の先生やアシスタントなど、その場にいる大人が笑顔をたやさず、どんな行動にも「それでいいよ」と声をかけました。
すると、少しずつ、行動が変わっていきます。
お母さんから離れて何かできた時、みんなで拍手して喜ぶ様子を見せていきました。
すると、顔つきが変わってきました。
参加する時の心に、変化が訪れたんですよね。
今ではその子は、何かのワークをする時には、クラスのお手本になるような、何事も率先して行動できる子になりました。
園児時代に出会った男の子
彼は最初、スタジオの玄関から中に入ることもできませんでした。
大きな鏡や、見たことのない生徒がいることが、苦手と感じたのです。
レッスンはしばらく観察を続けました。
その期間は、何ヶ月も続きました。
その間、インストラクターは、彼の目線の先を気にかけるようにしました。
すると、帰りたそうに外を見るのではなく、動いているインストラクターや生徒たちをずっと見ていました。
そして、少しずつ参加できるようになり、ほとんど休まずに毎週通ってくれました。
今では小学校高学年。
ブレイクダンスの難しい技もこなし、受講中もとても明るい男の子になりました。
3歳で出会った女の子
彼女は、レッスンに参加するのがいや!
そして、発表会のステージに立つのもいや!と、人生初の発表会の舞台に上がりませんでした。
同じ年齢の子たちが舞台で練習の成果を披露している中、ご家族はどんな気持ちでいらっしゃったことでしょう…。
でも、この後のご家族の行動が素晴らしかったです。
舞台に立たなかったお子さんを責めたりせず、この子はきっとダンスが好きなんだ、まだ心の準備が必要な時期なんだと、可能性を見捨てることはありませんでした。
実はこのご家族は、遠くから通ってくださっており、電車の乗り換えも必要です。
(今日も泣いてレッスンしないかもしれない…)
そんな気持ちを抱えていらした時期もありました。
それでも、可能性を信じて通学を続けてくださいました。
2回目の発表会からは、堂々と舞台で練習の成果を発揮できるようになりました。
そして彼女は成長するにつれ、保護者の方の付き添いなしで、通い続けてくれています。
今ではセンターで踊ることもあり、今の彼女だけを知っている方は、誰も3歳のころの姿を想像できないでしょう。
1歳で出会った女の子
彼女は、不安になると、指をくわえて動かなくなるお子さんでした。
非常に意志が強く、できないと思ったら絶対にやらないお子さんでした。
特に彼女は、マットでの運動が怖くて、幼いころは絶対に参加しませんでした。
(運動神経の向上のため、ダンススクールですが、園児クラスでマット運動をしています)
それでも、毎回マットのトレーニングに誘い続けました。
続けていると、感情に変化がある時があります。
そのタイミングを見逃さず、小さな成功体験を積み重ねていきました。
年齢が上がるにつれて、運動能力が向上し、どんどんマット運動が好きになりました。
現在は、ダンスクラスとアクロバットクラスに所属し、小学校1年生ながらに、ひとりでバク転(後方倒立転回)ができる女の子に成長しました。
ここにご紹介した子達は、みんな観察時間に心の準備をしっかりしてきました。
そして、親御さんは、その時間を否定せず、お子さんの可能性や好きなことを信じ続けました。
今ではみんなとても積極的に、日常生活を過ごしています。
まとめー子どもの可能性は無限大ー
20年以上子どもたちを指導してきて、いつも私が感じていること。
子どもの可能性は無限大だ!ということです。
その可能性を伸ばすのも、損なうのも、周りの大人の言葉や行動次第だと思います。
「積極性に行動できる子」を育てるのに必要なこととは
・「観察→心の準備」の時間を待つこと
・親が安心感を与えてあげること
・時にはチャレンジのハードルを下げること
・小さなステップも、できた時はたくさんほめること
このコラムに出合ってくださったご家族が、
「うちの子は消極的というわけではないんだ」と気づいてくださり、観察時間と心の準備を大切にすることで、大きな成長につながることを願っております。