校長コラム
2024年3月22日
スピード解決!「きょうだい子育ての6つのお悩み」
「1人の子育てでも大変なのに、きょうだいがいると本当に手いっぱいで……」
という保護者の方、多いのではないでしょうか。
前回コラムでご紹介しきれなかった、「きょうだい子育て」でありがちなお悩みや問題について、年間1.4万人が受講する、1歳から高校生までのキッズダンス専門 Ti-ccha(ちっちゃ) KID’S DANCE SCHOOL 校長であり、3人兄弟の子育てをしているチャイルドコーチングアドバイザーTi-cchaより、その解決法をご紹介させていただきます。
▼目次▼
▼目次▼
お悩み1「上の子をかわいいと思えない」
小さな子は、かわいいですよね。何時間でも見ていられます。
一方、上のお子さんは、「自分の意見もしっかりしてきて、赤ちゃんの時のように、されるがままではなくなってきた」としましょう。
親御さんの思うようにいかないことが、増えてきていませんか?
疲れてきていないですか?
例えばこんなこともあるかもしれません。
下の子が泣いているのに、上の子はわがままばかり。
下の子にお乳をあげているのに、上の子は暴れたり散らかしたり。
そんな時は、一度、上のお子さんとしっかり向き合ってみてはいかがでしょうか。
もしかしたら、その行動は上のお子さんからの「寂しいよ」のサインかもしれません。
表現方法がまだ未発達の小さなお子さんは、寂しい時、「泣いて伝える」以外の行動をすることもあるんです。
私は、次男が生まれてまだ赤ちゃんのころ、長男にこんな対応をしたことがあります。
ある日、家でお昼寝から目覚めた次男が泣いていました。
でも、その時の私は、イヤイヤ期真っ最中でグズグズした日が多い長男の「してほしいこと」に、とことんつき合ってみました。
(内心は心が痛い。早く次男のところに行ってあげたい)
しばらくすると、長男が、こんなふうに言ってくれました。
「お母さん、〇〇(次男)が、さっきからずっと泣いてる! 行ってあげて!」
この日をきっかけに、長男の中に「兄」としての自覚が芽生えていったような気がします。
それから長男は、「次男の子育て」のパートナーのような存在に成長していきました。
「僕(長男)がお母さんにしてほしいことはやってくれるから、弟のことで僕ができることはやってみよう。」
長男の内面を想像するに、このような感じだったかもしれません。
弟は、優しい兄に懐いていきますし、兄弟が仲良くしてくれることは、家事で忙しい時間に大変助かりました。
小さな次男はかわいいですし、たくましくなった長男のことも愛おしい気持ちでいっぱいになりました。
必ずうまくいくとは限りませんし、いざやってみようとすると、小さな赤ちゃんが、延々と泣いているのを、そのまま放置してしまうのは心が痛いですよね……。
すぐにでも駆け寄って、抱き寄せてあげたい。安心させてあげたい。
ご近所の方が、泣き声が続くので心配されないかどうかも気になりますよね。
そんな気持ちも、とってもよくわかります。
その場合は、ご家族やご友人に、下のお子さんのそばにいてもらって、ご自身は、上のお子さんにかかりっきりになってみるという手もあります。
日ごろお世話しているのが主にお母さんだとすると、だれかに下のお子さんを見てもらっても、お母さんが来るまで泣き続けるかもしれません。
そんな様子を見て、上のお子さんは「自分もお母さんが好きだけど、弟(妹)も、お母さんに来てほしいんだ」と経験する機会にもなると思います。
何度もこれをお試しになるのは大変だと思いますので、
今日こそは!
という日に、お試しになってみると、もしかしたら上のお子さんに変化が生まれるかもしれません。
お悩み2「やることが多くて時間が足りない」
私は、ワンオペ育児中の母であり、ダンススクールの経営者でもあります。
補足させていただくと、
・両親&夫の両親も遠方に住んでいて、自営業をしており子育てのサポートが難しいです。
・夫は、帰宅が深夜になる職業です。
・私自身も拘束時間が長い仕事です。
この状況下で、風邪でも休めないために悪化、子育て期間中のこの10年間に3回も、入院を勧められるほどの肺炎(新型コロナ以外)になっています。
家事・育児・仕事の両立がどれだけ大変か経験してきて、
「もうこんなつらい思いはしたくない!」と、これまでの生活を見直し、ブラッシュアップしていった結果、見えてきたのはこんな方法です。
1【就寝時間をしっかり決める】
睡眠不足だと健康上よくないのと、全体の作業効率が下がるためです。
2【子どもと一緒に寝られるスケジュールにする】
寝かしつけには、数分〜1時間程度かかる場合もあります。
予測のつかない時間を、1日のスケジュールに組み込むのは非効率的です。
そのまま寝てしまえるように計画・準備しておけば、その後あわてたり、困ったりすることが少なくなります。
※お子さんの年齢によっては、7時台に寝る子もいます。また、下のお子さんが寝た後、ご主人・ごきょうだいの夕飯がある場合もありますよね。この方法は、お子さんの就寝時間・他の家族の状況によるところもあります。
3【朝の間に、できる限りの家事を済ませる】
「今日絶対こなすこと」という重要タスクは、子どもたちが寝ている早朝のうちに済ませます。
まずは、1日のスケジュールを決めて、それを家族と共有します。
子どもは、大人と違ってイレギュラーな対応が苦手です。日によってやることや順番が違うと対処しきれず、感情の整理もうまくつけられないので、ぐずりやすくなります。
だから、「毎日何時に何をする」と決まっていたほうが、行動しやすくなるのです。
4【各家事の所要時間を把握する】
洗濯〇分
掃除機〇分
全体の所要時間を把握することで、1日のうちにかけられる家事時間の中で、毎日のルーティーンをこなせるように、スケジュール調整がしやすくなります。
5【家族はワンチーム】
夫婦に上のお子さんも含めて、チームのメンバーとして団結して、日々の生活の戦略を立てていきます。
「家のことはお母さんがやる」とか、だれか限定の役割とするのではなく、家族で生活するために必要な家事を「皆で分担する」という考えを持てると素敵だと思います。
お子さんが小さいうちは難しいかもしれません。
しかし、直接家事をするのは無理でも、
「お母さん、これからご飯作るから、その間2人でテレビを見て待っていてね。その間、もし弟(妹)が泣いてしまったら、優しくしてあげられる?」
と、上のお子さんに尋ねてみるのです。
子育ての大変なところは、自分1人ならすぐに終わることでも、お子さんが泣いたりぐずったりで、それまでの作業を中断しなければならなくなり、想定外の時間がかかることです。
「ご飯を作る間、集中できる。」
これだけでも、精神的な疲労度は違います。
そして、無事に夕食の支度が終わったら、(特に問題も起こらず、2人で平和にテレビを見ていただけだったとしても)上のお子さんにこう言います。
「助かったよ〜〇〇(上の子の名前)が⚫️⚫️(下の子の名前)を見てくれていたから、お母さんスイスイご飯つくれたよ!」
と助かった部分を伝えれば、上のお子さんも「面倒なことを押しつけられた」というより、「お母さんを助けたんだ!」という気持ちになれます。
そして、お子さんが成長するにつれ、家族としての役割分担も、バージョンアップしていけると思います。
お悩み3「下の子が、『お下がり』ばかりになってしまう」
「上の子のものは常に新品で、下の子は上の子のお下がりばっかり」という方、申し訳ない気持ちになっていらっしゃいませんか?
「お下がり」は、前に使った人の楽しい思い出も引き継ぐ、素敵なことだと私は考えています。
下の子がお下がりはいやだと思わないように、私は、上の子の時から、よくリサイクルショップを利用しました。
だれかが使っていた物を、大切に引き継ぐ。
そのようにしてきた結果、下の子もお下がりに抵抗はなくなりました。
しかし、上の子が成長(サイズアウト)することで、上の子ばかり新しい物を買ってもらえるという状況は、避けた方がいいかもしれません。
下の子のほうに、上の子をうらやましく思う気持ちが生まれてしまうからです。
我が家の対策として、毎日使うスニーカーは、お下がりにしないようにしました。
その理由は他にもあり、健全な足の発達のためということもあります。
それぞれ体のつくりや重心の位置も違い、上の子が履いていていたスニーカーが、下の子の足にぴったり合うとは限らないからです。
我が家はスニーカーでしたが、そのご家庭に合った「これは必ずきょうだいそれぞれに新品を買う」という決め事があると、下のお子さんの「自分だけ使い回しのものを与えられている」とういう印象を軽くできるかもしれません。
お悩み4「上の子が下の子の面倒を見てくれない」
質問です。
親御さんの会話の中で、
「(A)はこうなのに、(B)はこう。」
「(A)はすぐできたのに、(B)はまだできない。」
A・Bは、それぞれ、上の子や下の子の名前が入っていると思ってください。
お子さんの前で、このような発言をしたことはありませんか?
もし、「下の子の面倒を見ない」ことを、本当に改善したいと思っているならば、この会話をまずはやめてみてくださいね。
AさんもBさんも、家庭の中で比較され、競い合う対象になっています。
自然とライバル関係の状態になってしまっている中で、一方がライバルのサポートをするでしょうか?
現在、すでにお互いを比較する会話が日常になっているような場合は、こんな方法でリカバリーが可能です。
「(A)、(B)がね、あなたの〇〇がすごいってほめていたよ〜。」
「(B)、(A)がね、この間の△△ありがとうって言ってたよ〜。」
と、お互いを肯定的に見ていることを伝えます。
すると、相手への見方が少しずつ変わっていくのです。
そのうちに、上の子さんが思いやりのある行動を取れるようになってきたり、下の子のお世話をしてくれたりしたら、下のお子さんには、ちゃんと「ありがとうって言おうね」と、感謝を伝えるように習慣づけていきます。
すると、上のお子さんは、感謝される経験が増えていきます。
兄・姉としての自己肯定感が高まり、「自分はきょうだいにとって、必要な存在だ!」という感情が育っていくのです。
もし、まだ下のお子さんが小さい場合や、お腹の中にいる時は、こちらのコラムもご参考に、きょうだいの関係づくりをしてみてくださいね。
お悩み5「上の子が大変な時期で、下の子に時間が取れない」
きょうだいの年齢やさまざまなタイミングによって、大変なことは変わってきますよね。
上の子・下の子それぞれに対して、365日同じだけの愛情を注ぐことはできなくて当然だと思います。
そこで、親御さんの「(今はどちらかに偏っているように見えたとしても)根っこの愛情は同じだよ」という気持ちを伝えてみてはどうでしょうか。
例えば
「いってらっしゃい!」
という場面で、上の子と下の子、どちらかにだけ言い方を変えたりしてはいませんか?
片方にはシンプルに「いってらっしゃい!」
もう片方には、「いってらっしゃい。忘れ物はない? 気をつけて行っておいでね。」
と会話のボリュームが違ったりしていませんか?
日常の会話でも、年間通じてずっと、どちらかだけが叱られたり注意されたりする数が多くなっていませんか?
些細なことですが、子どもたちは、このような日常から、親御さんの心を受け取っています。
「卒園」「入園準備」「受験」など、上のお子さんにどうしても手がかかる時期はあります。
それでも、ふだんの会話の中で、きょうだいどちらかに比重が大きくならないように気をつけておくことで、
「お母さん(お父さん)は、あなたたちきょうだいそれぞれが大事だよ! でも今は、〇〇が大変な時だから、一緒に応援しよう!」
というメッセージが、素直に受け取れるようになるでしょう。
このように、一緒に応援する雰囲気づくりができていたら、一定期間、どちらかだけに親の目が向いてしまっても大丈夫だと、私は考えています。
さらに、私は子どもたちが小さい時は、寝る前の子守唄を「替え歌」にしていました。
替え歌の歌詞に「子どもたちの長所をほめる言葉」を入れて、子どもたちは毎晩寝る前にほめられて、気分よく眠りにつけるようにしていました。
替え歌が難しくても、きょうだいのだれかに手をかけてあげられない日があったとしたら、
「今日は学校楽しかった?」「うん。」
という短い会話でも、「あなたのことも気にかけていますよ」という親心を伝えることができますよ。
お悩み6「いつもけんかばかり…時には手が出てしまう」
「疲れている」「お腹が空いている」「学校(園)で何かあった」……きょうだいげんかが起きたら、まず先に、きょうだい間の性格の違いや相性とは別に、何か問題はないか考えてみてくださいね。
我が家は、夕方にけんかが多く、不思議に思った時期がありました。
同じ三兄弟を育てている先輩ママに聞くと、
「夕方は空腹なことが多いから、帰ったらまず何か食べさせてみるといいよ」
とアドバイスされ、夕方の「空腹状態」を改善してみました。
すると、これまでが嘘のように、けんかが減りました。
同じ屋根の下、それぞれ感情を持って生活しているきょうだい。
しかも、おもちゃやゲームなど、自分がほしいものを取られたり、相手のものが魅力的に見えたり、日々、お互いの感情がぶつかり合っている状態です。
きょうだい仲が悪いと感じたら、まずは何か原因がないか観察してみてくださいね。
疲れ、精神的な不安、寂しさ、悔しさ。
……そんな感情も、きょうだいげんかのきっかけになってしまいます。
他に問題がなさそうだと思った場合は、ルール作りを考えます。
たいていのきょうだいげんかでは、相手のものが魅力的に見え、「自分も使いたい。でも貸してもらえない」ということが多いです。
取り合いになった時のルールがあると、必要以上の衝突を避けられるかもしれません。
「取り合いになったら、5分ずつ交代」
「取り合いになったら、一緒に使う」
など、お子さんが年長さん以上でしたら、できれば本人たちで決められると理想的ですね。
しかし中には、手が出てしまうほどのきょうだいげんかに至る場合もあるかもしれません。
そんな時は、「手を出してしまった側がどれだけいやだったか」その気持ちに寄り添ってあげることも、親御さんがしてあげられることだと思います。
その上で、「だからと言って手を出すのはいけない」ということも、しっかり教えなくてはいけないと思います。
手が出てしまう理由は、自分の感情の整理がまだうまくできないから。
「けんかをして、手が出てしまいそうになったけれども、なんとかがまんできた」ならば、その瞬間こそ成長のチャンスです。
その行動をたくさんほめることで、お子さんは自分の感情とどう折り合いをつけるといいのかを学んでいけると思います。
きょうだいの子育ては、体力が必要な時もあると思います。
大変なことも多いかもしれませんが、家に子どもの笑顔が並ぶのもまた、楽しい時間です。
このコラムに出合ってくださったご家族が、今より少しでもきょうだい子育てが楽しいと感じる時間が増えますよう、心から願っております。