校長コラム
2024年4月26日
「自主性がある子」の育て方〜NGワードに注意!
この4月に進級し、「○○ができるようになりたい」「○○がうまくなりたい」など、意欲が高まっているお子さんは多いかと思います。
一方で、なかなかやる気が出ない子や、言われないと行動を起こさない子に、「どうしたら、自分からできるようになるの?」と悩みをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
年間1.4万人が受講する、1歳から高校生までのキッズダンス専門
Ti-ccha(ちっちゃ) KID’S DANCE SCHOOL 校長であり、チャイルドコーチングアドバイザー&上級心理カウンセラーTi-cchaより、親御さんにできるサポート法をご紹介させていただきます。
▼目次▼
NGワード1 「○○をしなさい」
子育てしていると、ついつい使いがちなワード
「片付けなさい。」
「お風呂に入りなさい。」
「ご飯を食べなさい。」
「時間を守りなさい。」
「忘れ物がないようにしなさい。」
こんな言葉をかけ続ける日々の中で、「何度言ったらわかる?」と思っていらっしゃる親御さんはいませんか?
「何度言う必要があるか?」その答えは….
「永遠に」です。
驚きましたか?
なぜ、「永遠に」言い続けることになるかというと、お子さんの中で
「言われてからやる」ことが「日常」になってしまっている可能性があるからです。
自分から行動を起こさなくても、親御さんがちゃんと先回りして言ってくれるので大丈夫、と学習してしまっているのです。
NGワード2「⚪️⚪️ちゃん(くん)はできているのに…」
同じ年齢や近い関係の人を例に挙げて、「○○ちゃんはできているのに……」
そう言ってしまうことも、よくあると思います。その子ができているから、あなたにもきっとできる、というアドバイスですね。
この言葉が成功につながる可能性は、残念ながら限りなくゼロに近いです。
他人は他人です。
親御さんも、例えばお子さんが有名な料理人を見て
「あの人、子育てもお仕事もしているのに、あんなに美味しそうなお料理作っているね! お母さんもできるでしょう。」
と言ってきたとしたら、なんと答えますか?
「あの人はあの人。私は、あの人と違う。だって……」とできない理由を並べたくなりませんか?
大人だって、人と比べられて同じことをするように言われたら気分はよくありませんし、やる気もなくなりますよね。子どもだって同じことです。
NGワード3「次にできなかったら、⚪️⚪️は禁止」
「次にできなかったら……」と言って、罰則を設けるということ。
状況によっては即効性があるかもしれませんが、残念ながら、持続的な効果は期待できません。
具体的に見てみましょう。
「次に忘れ物をしたら、ゲームは禁止。」
「次に学校に遅刻したら、YouTubeは禁止。」
「次に宿題を忘れたら、公園遊びは禁止。」
こんなふうに、ミスのたびに何かを禁止され、楽しみが奪われる中で、お子さんは笑顔で楽しく過ごせますか?
「罰を与えて行動を改めさせる」のは、子どもの成長過程において、いい影響を与えないことが多いです。
以上、ここまで挙げたNGワードは、自主性を伸ばせない声かけの例でした。
では、親御さんのどんな行動が自主性を伸ばすきっかけになるのかを、ご紹介していきますね。
ステップ1 生活環境を整える
「自主性を伸ばすために、生活環境を整える?」
「そこからしないといけないの?」
そんな声が聞こえてきそうですね(笑)
ちゃんと根拠があるんです。
心理学の世界では、「人には5段階の欲求のステップがあり、一番下位の欲求が満たされないと、次のステップに進むことが難しい」と考えられています(注:マズローの欲求5段階説)。
この5段階の欲求と自主性は、とても密接な関係があると、私自身も日々感じています。それぞれの欲求に関連した親御さんのサポート法をお伝えしていきますね。
生理的欲求
食欲が満たされている。
睡眠時間がしっかり取れている。
日々健康に過ごせている。
このように、生命維持に必要な事柄が、しっかり土台にあるか、実はとても大切なことなんです。
ですから、まずはお子さんの生理的欲求をしっかり満たした環境であるかどうかの見直しが必要です。
生命維持に必要な土台がしっかりとしていない状態では、お子さんの自主性が育っていくことは難しいです。
ステップ2 信頼関係を作る
お子さんを叱る時、親御さんはどなっていませんか?手をあげていないですか?
園や学校でいじめにあっていないですか?
先生とは良好な関係ですか?
その子自身が、不安に感じるようなことが身近にあると、心の不安定さから、自主的な行動に繋げるのが難しくなってしまいます。
社会的欲求
保護者や仲間から認められたい。
この社会的欲求は「所属と愛情の欲求」とも言われています。
お子さんは、家族の中で自分が大切な存在であると、自覚できているでしょうか?
もし、こんな言葉をかけられていたら、自分を大切な存在だとは自覚できません。
「あなたなんか生まなければよかった。」
そんなひどいことは言っていないから大丈夫と思われた方、次のような言葉はかけていないですか?
公園遊びなどで夢中になって、帰る時間を守らない時に
「じゃあね、バイバイ。もう知らないよ。」
何度も言うことを聞かない時に
「この家から出て行きなさい! ちゃんとできない子は、うちの子じゃありません。」
悲しさ・寂しさから「できるようにしよう」という行動の改善を期待していませんか?
その後、その子が親御さんの望む行動ができたとしても、それは、自主性ではないんです。
「家族でいられるため」の行動なのです。
同じ行動に見えても、自主性とは違うんです。
もしも、すでにこのように言ってしまって、読んでいて胸が苦しくなられた方、大丈夫ですよ。
ちゃんと、リカバリーの方法があります!
子どもたちの「社会的欲求」をかなえるために、今からでもできることがたくさんありますのでご安心ください。
その一つは、
【何かできた時にほめる】
これを続けてください。
どんな些細なことでもいいんです。
「今日も元気で過ごせてよかったね。」
「あなたの笑顔で元気もらえたよ。」
「いつもより早く行動できたね。」
「今日は宿題忘れなかったね。」
いつも叱ってばかりで……というご家庭の方は、お子さんが何かできた時、「当たり前のことだから、ほめるに値しない。甘やかしてはいけない」と思ってはいませんか?
私は、指導中にこんなふうに接しています。
元気すぎて、どうしても「お話を静かに聞けない」
そんなお子さんを例にしてみますね。
先生「ここは走っていい場所ですか?」→生徒「ダメ〜」
先生「今、歩いていた? 走っていた?」→生徒「走っていた…」
自分でダメなことをしていたと認識できたらすぐに「理解できたね!」
と、本人に伝えます。
このやりとりで、子どもは走るのをやめることができます。
そして何より肝心なのは、
「静かに最後までお話聞けたね〜」と、改善できた部分をほめることです。
このようなやりとりをくり返すことで、その子にとって先生は
「できたことを認め、ほめてくれる存在」
と認識するようになります。
すると「社会的欲求」
が満たされていく状態になるのです。
ご家族でも同じ状況を作ることができます。
「いつも叱られてばかりで、自分はこの家族にとって面倒な人間だ」
と思わせてしまうのか
「がんばったことを家族は認めてくれる。いつも応援してくれている」
と思わせるのか。
後者のような親子関係を作れたころには、お子さんは自主的な行動ができる子へと成長していると思います。
もし今現在、前者のように叱られることが多い子には、何かができた瞬間を見逃さずにしっかりほめてください。
些細なことも、当たり前のことも、全部です。
起床時間に起きれた時には
「おはよう! しっかり起きれたね!」
宿題ができた時には
「バッチリだね〜!」
こんなふうに、できたことをしっかりほめてみてください。
お子さんは「自分のがんばりが実る」成功体験が増えていきます。
でも、日々うまくいくばかりではありません。
時には、してはいけないことをする場合もあると思います。
そんな時は、
「朝起きれなくて、そのあとバタバタすることはいいことかな?」
こんなふうに会話をすることで、【今回の行動はよくないよ】と伝えることができますよ。
ステップ3 壁にぶつかった時は見直しをする
生理的欲求、社会的欲求を経て、次の段階にくると、さらに自主性を高められる時期になります。
承認欲求
他者から認められたり、賞賛されたいと思うこと。
お子さんの心の中で、
「家族が自分を認めてくれる」
「友だちが自分を認めてくれる」
このように感じていたら、非常にやる気に満ちあふれている状態だと思います。
そんな時には、下記に注意してみてくださいね。
成長段階の子どもたちは必ず壁にぶつかります。
がんばりすぎて朝起きれなくなった。
遅刻して学校に行くようになった。
機嫌の悪い日が増えた。
夜ふかしするようになった。
そんな負のループになる可能性もあります。親御さんはそのような場合、どうしたらいいでしょうか。
親御さんにできることは、リカバリーできる環境を用意することです。
自主性が育って活動的になると、必ず疲れが出てくる時期があります。体力も時間も有限です。
我が家の場合は「学校」「睡眠」「食事」「自主学習」「休息」この5つの時間確保を絶対条件にして、これが崩れてしまう場合は、活動を見直す約束にしています。
その理由は「生理的欲求」が満たされていない状況になってしまうからです。
いくら自主性が育ってきていたとしても、最初の段階の食事や睡眠といった「生理的欲求」が満たされない状況は危険だからです。
睡眠不足で無理にがんばっていたとして、それが長続きしますか?
食事の時間をしっかり確保できず、元気に活動ができるでしょうか?
結局は、子どもの健全な体の成長につながらなかったり、集中力の低下から怪我や事故の危険につながったりする可能性もあります。
そんな時は、お子さんの様子をよく見てスケジュールを調整したり、ゆっくり体を休ませる時間をとることが必要です。
自主性が育ち、活動的になった時にも、生活の土台となる「生理的欲求」が安定している状態を大切にすることで、自主性を伸ばし続けられると思います。
最後に
世の中には、
「ほめて伸ばす」
「ほめすぎたらいけない」
など、いろいろな指導方針があります。
どの方法にもいいところがあり、お子さんの性格にマッチした方法を取り入れられるといいと思います。
年間1.4万人のお子さんを成長に導くために当校では、多くの保護者の方や指導にあたるインストラクターとコミュニケーションを取りながら、18年間、子どもたちの成長と向き合ってきました。
まずは「生理的欲求」「社会的欲求」の土台をしっかりしていないと自主性を育むことは難しい、という理論をふまえて、指導に取り組んでいます。
このコラムと出合ってくださったご家族の子育てに、笑顔が増えることを心から願っております!
✴︎校長 取材いただきました✴︎
https://thefocus-on.com/kobayashi_hitomi/
✴︎校長Ti-ccha 講演会✴︎
https://www.ti-ccha.com/lecture/
✴︎お問い合わせ 公式ライン✴︎