校長コラム
2023年11月11日
効果のある叱り方 効果のない叱り方
「ダメなことをしたら、親としてきちんと教えたい。でもどうすればいいの?」
子育てで直面する悩みの多くは、この「叱り方」ではないでしょうか?
年間1.2万人が受講する、1歳から高校生までのキッズダンス専門
Ti-ccha(ちっちゃ) KID’S DANCE SCHOOL 校長であり、チャイルドコーチングアドバイザーTi-cchaより、特に未就園児から小学校低学年頃のお子さんに向けた方法を、ご紹介させていただきます。
叱り方(失敗事例)
【お友だちをたたいた】
母「ダメでしょ! 謝りなさい!」
子(謝らない)
母「謝らない子はもう知りません。」
子(泣いてとりあえず謝る)
こんな場面を客観的に見ますと、お子さんは、たたいたことについて、悪いことだときちんと認識して、謝っているでしょうか?
【約束を破った】
母「約束したよね?」
子(黙る)
母「もう◯◯はなしね。」
子(泣く)
この場面では、お子さんが泣くことで、一見反省しているように見えるのですが、それは本当に反省の感情でしょうか?
約束を守れなかった代償として取り上げられたものへの悲しみではないしょうか?
そもそも叱るとは?
子どもが間違った行為をした時に、大人としてそれが「いけないこと」だと教えることですよね。
チャイルドコーチングアドバイザーとして、年間たくさんの子どもたちとレッスンしていますと、叱ることは日常茶飯事です。
私が大事にしているのは「叱る」という行為に対して、子どもたちがどれだけ理解しているか、その内面をしっかり見るということです。
叱り方 ポイント1/状況を把握する
例えばお友だちとのトラブルで、お相手のお子さんが泣いていると、
「うちの子が泣かせてしまった」
と、先入観を持ってしまいがちではないですか?
しかし、本当にそうでしょうか?
お子さんにとって一番の味方で、よりどころとなるのはご両親です。
頭ごなしに叱るより、起こった状況を冷静に見ることを優先してみましょう。
ルールを破ったり、物を破損させたりで叱る状況になった場合も同じです。
なぜそうなったのか?
冷静に状況を把握しましょう。
そうすることで、お子さん自身も心が落ち着いて、説明しやすくなるでしょう。
叱り方 ポイント2/子どもの言い分を聞いてみる
まだ説明する力がないお子さんでしたら、まずは表情やしぐさで読み取ってみましょう。
怒っているのか?
泣いているのか?
お父さん・お母さんだからこそ見つけられる感情がひそんでいないか、しっかり顔を見てあげてくださいね。
ある程度話ができるお子さんであれば、泣いていたり取り乱している状態なら、一度感情を落ち着けることを優先しましょう。
取り乱している時は、何を言っても伝わりません。
感情を落ち着かせる方法としては、
- 抱いて背中をさする。
- 人がいない場所に移動させる。
- お子さんを壁向きに立たせ、視界の先を壁だけにする。
- お茶や水を飲ませる。
感情をおさめることがまだ上手でない子は、トラブルがあった現場にいる状態だと、親御さんが何かを言い続けても、効果がないことが多いのです。
まずは場所を変える、お茶を飲ませるなど、興奮状態を静めるような働きかけが必要です。
そのお子さんに合った方法が見つかると、大変な部分がかなり軽減しますよ。
いろいろ試してみてくださいね。
私も3兄弟の母ですが、みんな性格が違うので、三人三様の方法です。
感情がおさまり落ち着いた後でも、うまく説明できないお子さんもいます。
その時は、
「悲しかった?」
「眠かった?」
「つまらなかった?」
など、
想定できることを3つ程度挙げて、お子さんに質問してみてくださいね。
お子さんがいけないことをする、叱らなくてはいけない場面になるのは、
①好奇心で周りが見えなくなっていた
②負の感情が表れた
実は、このどちらかの場合がほとんどです。
例えば、お友だちのおもちゃを横取りしてしまったとします。
①の場合は、
母「ほしくても勝手にとってよかったかな?」
子「だめ・・・」
母「正解! じゃあどうしたらいいのかな?」
子「ごめんねする。」
②の場合は、
母「悲しいことあった? つまらなくなった? 眠かった?」
子「つまらなかった。」
母「つまらない時、お友だちのおもちゃ、勝手にとっていいかな?」
子「だめ…。」
それに対して失敗事例は
母「とったらだめでしょ! 謝りなさい!」
子(うつむいたまま)
母「謝らないダメな子は、お母さん、もう知りません。」
失敗事例のお母さんから、自分に寄り添ってもらえたという感情をお子さんは持つでしょうか?
質問をされて答えていく。
そうすることで、お子さんは自分がしたことをふり返ることが出来、寄り添ってもらえたという感情を抱けます。
叱り方 ポイント3/叱る時にしっかり理解させる
子どもが何度も何度も、同じことをして叱ることってありますよね。
大人のほうも、叱り疲れてしまいます。
この原因は、本人が理解していないからなんです。
例えば、当校のダンススクールでは、「スタジオの中は走らない」
ということをしっかりお約束します。
これは、お店・図書館・商業施設など、いろいろな場所でも同じですね。
不思議なもので、「走ったらダメ!」と言っても、数分後には走っています(笑)。
好奇心旺盛な子どもたちですから、広いところが楽しいという気持ちが、走ってはダメというルールを飛び越えてしまうのでしょう。
そんな時は、
大人
「走ったら、歩いている時より友だちにぶつかりやすい? ぶつかりにくい?」
子ども
「ぶつかりやすい!」
こんな言い方に変えます。
「走ったらダメ」
↓
どうしてダメなのか、理由をセットで伝えることが大事なのです。
大人の頭では「走ったら友だちにぶつかって危ないから走らない」と言われなくてもわかりますが、常識がまだ身についていない子どもには、
「走ると危ない」ということから説明する必要があるんです。
叱り方 ポイント4/できている時にほめる
実は、これが一番効果的です!
例えば、お店に行って、走っていない瞬間があったとします。
「うわ〜すごい! お約束守れているね! 走ってない!! 歩いているね!!」
こんな感じです。
ほめられた嬉しい感情は、お子さんの心の中に残りやすいので、何度も同じことで叱り続けるより、できている瞬間にタイミングよくほめることで、叱らなくてはいけない行動を、グッと減らすことができますよ。
叱り方 ポイント5/叱らなくていいように事前確認をする
「今から◯◯に行きます! 走ってもいいですか? 大きな声でお話ししてもいいですか?」
こんな風にクイズ形式で、確認作業をします。
子どもたちは、クイズが大好きです。
正解したら必ず「正解〜!」とほめて、子どもの心の中に嬉しい感情を残してあげます。
この「事前確認」を、するとしないでは大違い!
子どもの好奇心は、いつ爆発するかわかりません。
とっさに叱るのは、親御さんにも大きなパワーが必要です。
しかし、新しい場所に出かける時など、想定できることを事前に子どもに伝えておくことで、一度頭の中で整理する時間ができます。
事前に伝える→頭で整理する→できたらほめられる
このルーティーンを繰り返すことで、叱らなくてはいけない行動をグッと減らすことにつながると思います。
叱り方 ポイント6/「人格否定」「代償」に注意
叱るって、難しいですよね。
年齢も性格も違えば、叱り方もさまざま。
しかし共通して、これだけは避けていただきたいことがあります。
それは
- 「ダメな子」という人格否定
- 代償として何かを取り上げる
具体的に説明していきますね。
「ダメな子」という人格否定
親御さんご自身が、お父さんお母さんから、このような言葉をかけられたことはありますか?
その時にどんな感情になりましたか? あるいは、どんな気持ちになると思いますか?
叱る時には「人格」ではなく「行動」を叱るようにしてください。
人格「ダメな子」
行動「ダメなこと」
伝える側は意識せず伝えてしまうことがあるかもしれませんが、自分自身をダメと言われるのと、行動をダメと言われるのでは、大きな違いがあります。
親御さんの叱り方次第で、お子さんの自尊心の低さにつながってしまう可能性もあると理解しているだけでも、お子さんの健全な心の育成につながりますよ。
代償として何かを取り上げる
お子さんが一番落ち込むので、反省しているように見えるかもしれません。
この親御さんの行為に、一貫性があれば大丈夫です。
わが家の場合は、
「その日の宿題・タブレット自主学習・習い事の自主練が全て終わったら、ゲームをしてもいい」というルールになっています。
このようなルールがあって、その約束を破り、ゲームを先にしてしまったとすると、子どもたちも、ゲームを取り上げられてしまうことを理解できると思います。
帰る時間が決まっているのに守らなかった
↓
時間を守れるようになるまで、外遊びは禁止
こちらも、ルールを守れなかったことでの罰則なので、お子さんも納得できるでしょう。
ルール上で成り立っていないケースとは、
何度言っても、寝る時間を守れなかった
↓
誕生日プレゼントがもらえない
親御さんの中でルールとプレゼントの関連性があるのでしたら、そこを説明してあげるといいのですが、お子さんがそれを理解できず
ールールを守らせるために、お子さんが困ることを設定したー
場合、効果はその時だけになることが多いです。
また、お子さんの中で理解できない状態ですから、日常が
「これができなかったら、あれはなし」だらけになりかねません。
お子さんにとって当然楽しくない日々で、恐怖感と共に過ごさなくてはならなくなります。
このやり方を変えるなら、できたことをほめて、シールを貼ったり、表をつくって◯を増やしていったり、お子さんができたことを見える化してあげるほうが何倍も効果的で、子育ても楽しくなりますよ。
最後に…叱られる行動には「寂しさの裏返し」も
子どもたちの健気すぎるエピソードをお話しします。
日々の家事・育児・お仕事。
大変な時間をお過ごしの中、お子さんの顔を、1日何度見てあげられていますか?
子どもは、寂しいとこちらを見てほしくなります。
それでも、忙しそうにしているご両親が自分を見てくれる時間が少ないと、
ー悪いことをしたら、叱ってくれる。こっちを見てくれるー
実は、叱られる行為であったとしても、自分を見てほしいと、わざと悪いことをする子もいるんです。
こんな日常になっていないか、立ち止まって考えてみると、日々が少し変わるかもしれません。
「忙しい時に限って、悪さをして私を困らせる。子育て本当に大変!!」
「叱ってばっかり! 私、こんな人間じゃなかった!」
「一日中イライラしていないといけない。もうしんどい。」
私も、何度こう思ったことでしょう。
感情をうまく伝えられない子どもといると、どうしてもこういう負のスパイラルにはまってしまう時期がありました。
もし、こんなふうに叱り続けるスパイラルにはまり、しんどくて精神的に疲れてきた時、家で誰にも迷惑をかけない悪さなら、叱らないで大丈夫ですよ。
叱る作業ばかりで、心がギスギスしてきたら、親御さんも叱るのはいったんやめて、心を休めてください。
そして、お子さんのことをしっかり見つめて、笑顔で抱きしめてあげてください。
こんな方法でも、イタズラや悪さは減り、叱る回数が減るかもしれません。
私の経験談ですが、三男はいろいろ面白いことを繰り出してくれました。
三男が小さい頃は仕事も忙しく、息子たちの顔を見て、微笑み返す瞬間が少ない時期もあったと思います。
三男は、服を脱ぐことで、寂しさのストレスレベルを表現する子でした。
靴下だけだと、レベル1
ズボンも脱いだら、レベル2
全裸だったら、レベル3
みたいな感じです。
そんな時に、同時にイタズラをしていたら、叱るより、寂しかった心を癒すことを優先しました。
冷蔵庫から出してきたマヨネーズを畳に塗っていても(笑)。
その時の三男には、「食べ物で遊んではいけない」と叱るより、寂しかった気持ちを理解し、癒し、その上で「これはダメなこと」と教えるほうが大切だと感じました。
私も長男のころから、そんな風にできたわけではありません。
長男・次男から、母としていろいろ経験させてもらい、試行錯誤の上、三男の育児に活かしています。
大切なお子さんだからこそ、叱る時は叱り、しっかり子育てをしていきたいという気持ちは、とっても素敵なことです!
しかし、厳しく叱ることだけが親御さんの役割ではなく、叱られる行動の影に潜む、お子さんの感情に寄り添うことこそが、本当に大切なのだと思います。
これを書きながら、私も改めて、肝に銘じています。
このコラムと出会っていただいた方の子育てが、叱ることより、ほめることが多く、笑顔あふれる子育てになりますように、心から願っています!